2016年7月24日日曜日

Noism 劇的舞踊vol.3「ラ・バヤデール-幻の国」 静岡公演 感想

2016年7月24日 日曜日 静岡芸術劇場

(キャスト・スタッフは末尾に掲載)

一階前方僅かに上手側。

まずは、開演前の案内アナウンスであるが、独特のオドロオドロしさを伴う男の人の声であるが、本当に素晴らしい。開演前のオドロオドロしさを感じさせる音楽と、完璧にあっていた。

毒蛇を仕掛けたのは、お美しい梶田留以ちゃんの仕業?(たまいみき さんかも知れないけど。でも、留以ちゃんの持ってた壺だったような?)佐和子さんを見る眼がこわいよ〜。

石原悠子さんは愛知公演に引き続いて面白さを感じる。「壺の踊り」の後で拍手あり。真面目過ぎる東京・名古屋とは違う反応である。静岡の観客の反応いいなあ。

中川賢さんはダメ男ぶりを発揮した♪もちろん、踊りも完璧だ。

井関佐和子さんは、終始愛を感じさせる演技であるが、幻想の場面での、病的でありながら慈愛に満ちた表情を見て(阿片でキメタ、ダメ男の願望だろうけど)、涙腺が潤む。

前半部だったか、佐和子さんと賢さんとが呼吸を吸って吐くシーン、音がばっちり観客席に響く。401席の静岡芸術劇場ならではの光景だ。

俳優部門も全員素晴らしいが、たまいみき さんのセリフが、力んでいた愛知芸術劇場公演とは打って変わって、今日は威厳がありながらも自然に聴こえた。ホームの劇場であることもさりながら、適切な規模の劇場であるからだろう。観客との親近感が、声の自然な響きを引き出したのだろうか?

静岡芸術劇場は、最前列だと確実にダンサーの汗を浴びる程の近さだ。近いだけに、全ての踊り、全ての演技が迫ってくる。随所で涙腺が潤む状態だった。幻想の女性たちが迫る場面は、美しさと臨場感とを併せ持っていた。この独特な場面は、KAATでも実現出来なかったと思う。

演出の金森穣さんは、アフタートークで「記憶と慰霊」を念頭に入れていたとの事である。

Cast
カリオン族
ミラン:井関佐和子、ヨンファ:梶田留以
踊り子:飯田利奈子・西岡ひなの・西澤真耶・鳥羽絢美
メンガイ族
バートル:中川賢、アルダル:チェン=リンイ、兵士:リン=シーピン、少年:田中須和子
マランシュ族
フイシェン:たきいみき、 侍女:浅海侑加・深井響子・秋山沙和・牧野彩季
ポーヤン(フイシェンの侍女/ヤンパオ居留民のスパイ):石原悠子
馬賊
タイラン:吉﨑裕哉、 シンニー:池ヶ谷奏
馬賊の男:佐藤琢哉・上田尚弘・髙木眞慈
オロル人
ガルシン:奥野晃士
ヤンパオ人
ムラカミ:貴島豪、 看護師:石原悠子

演出:金森穣
脚本:平田オリザ
振付:Noism1
音楽:L.ミンクス《ラ・バヤデール》、笠松泰洋
空間:田根剛(DORELL.GHOTMEH.TANE / ARCHITECTS)
衣裳:宮前義之(ISSEY MIYAKE)
木工美術:近藤正樹
舞踊家:Noism1 & Noism2
俳優:奥野晃士、貴島豪、たきいみき(SPAC ‒ 静岡県舞台芸術センター)

舞台監督:夏目雅也
舞台:中井尋央、高橋克也、川口眞人、尾﨑聡
照明デザイン:伊藤雅一(RYU)、金森穣
照明:伊藤雅一(RYU)、葭田野浩介(RYU)、伊藤英行
音響:佐藤哲郎
衣裳製作:ISSEY MIYAKE INC.
衣裳管理:山田志麻、居城地谷
トレーナー:國分義之(郡山健康科学専門学校)
テクニカルアドバイザー:關秀哉(RYU)
PR協力:市川靖子
特設サイト制作:ビークル・プラス
特設サイトインタビュー取材・執筆:尾上そら
写真撮影:遠藤龍
ビジュアルデザイン:阿部太一(GOKIGEN)

2016年7月10日日曜日

Camerata de Lausanne, Nagoya perfomance, (10th July 2016), review カメラータ-ドゥ-ローザンヌ 名古屋公演 評

2016年7月10日 日曜日
Sunday 10th July 2016
宗次ホール (愛知府名古屋市)
Munetsugu Hall (Kyoto, Japan)

曲目:
Johann Sebastian Bach: Concerto per due violini BWV1043
Дмитрий Дмитриевич Шостакович / Dmitrii Shostakovich: Due pezzi per ottetto d'archi, op. 11 (弦楽八重奏のための2つの小品)
Пётр Ильич Чайковский / Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Сладкая греза op.39-21 (甘い夢)
Пётр Ильич Чайковский / Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Waltz e Scherzo op.34
Пётр Ильич Чайковский / Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Воспоминание о дорогом месте op.42 2.Scherzo, 3.Mélodie(なつかしい土地の思い出)
(休憩)
Пётр Ильич Чайковский / Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Serenata per archi op.48

orchestra: Camerata de Lausanne

カメラータ-ドゥ-ローザンヌは2016年7月3日から11日までにかけて日本ツアーを行い、仙台で1公演、東京で3公演、神奈川県藤沢市で1公演、名古屋で1公演、計6公演が開催される。この評は、五番目の公演である名古屋公演に対してのものである。

弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴィオラ→ヴァイオリン-チェロのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。

着席位置は二階正面後方上手側、観客の入りは、7割程か。同じ時刻で名フィルの演奏会があり、観客が割れてしまったか?観客の鑑賞態度は、概ね良好であったが、僅かに拍手とブラヴォーが早かったように思える。スピーカーのスウィッチを切り忘れたような音が終始響いていたのは残念だった。

男性は黒、女性は赤で統一された衣装で登場する。ピエール=アモイヤルの門下等の繋がりで結成されているからか、奏者は彼以外は若手に見える。

全般的に終始素晴らしい演奏であるが、ショスタコーヴィチのop.11、チャイコフスキーの弦楽セレナーデ、アンコールのニーノ=ロータが特に素晴らしい。

響きが若々しく、一方でニュアンスに富み、低弦も豊かに響いた。ショスタコーヴィチはヴィオラが豊かに鋭く響かせているのが効いている。ショスタコーヴィチが初期の作品からその天才ぶりを発揮したのが良く分かる。

その後のチャイコフスキーの小品集は、「甘い夢」でアンドレイ=バラーノフのソリスティックな、パガニーニ的テクニックの披露を聴けるのは楽しいけれど、ショスタコーヴィチがチャイコフスキーを馬鹿にしまくっていたのが良く分かってしまう選曲ではあると言っては、怒られるか?

しかし、後半の弦楽セレナーデは、同じチャイコフスキーとは思えないアプローチである。テンポは全般的に速めで、メリハリを付けた緊張感を絶やさない演奏だ。チャイコフスキーの甘い演奏が嫌いな人に聴かせたい演奏である。ヴィオラ・チェロが表に出る部分はしっかり聴かせてくれる。一方で、ニュアンスも豊かだ。テンポの揺らぎはバッチリ決めてくる。小技に効かせ方が絶妙である。第四楽章だったか、チェロが主旋律を弾いている際の、ヴァイオリンが音量を的確に調節したニュアンスの効果は絶大だった。正統派のチャイコフスキーではないのだろうけど、小技の掛け方がいい意味で職人的に絶妙に計算されているのだろう。本当に新鮮で面白いチャイコフスキーだ。絶賛するしかない。

アンコールは、J.S.バッハの「アリア」と、ニーノ=ロータの「弦楽のための協奏曲」から第四楽章である。ニーノ=ロータの作品は、あたかもショスタコーヴィチに対するアプローチで、ニーノ=ロータが映画音楽だけの作品家ではない、純音楽の作曲家として非凡な才覚を持っている事を認識させられる演奏である。奏者の若さが的確に導かれ、全員の才覚が花開く、傑出したニーノ=ロータであった。

2016年7月9日土曜日

Михаи́л Васи́льевич Плетнёв / Mikhail Pletnev, recital, (9th July 2016), review ミハイル=プレトニョフ 豊田公演 評

2016年7月9日 土曜日
Saturday 9th July 2016
豊田市コンサートホール (愛知県豊田市)
Toyota City Concert Hall (Toyota, Aich, Japan)

曲目:
Johann Sebastian Bach (arr. Liszt Ferenc): Preludio e fuga BWV543/S.462-1
Edvard Hagerup Grieg: Sonata per pianoforte op.7
Edvard Hagerup Grieg: Ballade i form av variasjoner over en norsk folketone op.24 (ノルウェー民謡による変奏曲形式のバラード)
(休憩)
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per pianoforte n.9 K.311
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per pianoforte n.14 K.457
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per pianoforte n.15(18) K.533/494

pianoforte: Михаи́л Васи́льевич Плетнёв / Mikhail Pletnev

ロシア連邦のピアニスト、ミハイル=プレトニョフは、2016年7月1日から9日に掛けて日本ツアーを実施し、リサイタルを、東京オペラシティコンサートホール「タケミツメモリアル」(東京)(2公演)、兵庫県立芸術文化センター(兵庫県西宮市)、青山音楽記念館(京都市)、東京文化会館(東京)、豊田市コンサートホール(愛知県豊田市)にて、計6公演開催する。プログラムは全て同一である。理想的な音響となる中小規模ホールでの公演は、青山音楽記念館と豊田市コンサートホールの二か所だけである。

この評は、日本ツアー千秋楽である7月9日豊田市コンサートホールでの公演に対する評である。

着席位置は正面やや前方上手側、観客の入りは7割弱か。観客の鑑賞態度は、概ね良好だったが、肝腎な箇所でノイズが入る場面もあった。

プレトニョフのピアノは、構成がよく考えられており、正統派の路線で攻めている。ピアノは SHIGERU KAWAI を用いている。強奏部がストレートに響くと言うよりは、独特な透明感で来るような印象を持つ。大規模ホール独特では向かないかもしれない。

グリークにしてもモーツァルトにしても、プレトニョフによる深い分析を経て決定された響きで、観客に示されるように思える。モーツァルトには「軽やかさ」の要素は希薄で、その分、プレトニョフの神経を通わせた要素が入り込んでいたのかと。

わずかにグリークの方が、プレトニョフとの相性は良かったか。

アンコールは、リストの「愛の夢」と「小人の踊り」であった。

2016年7月2日土曜日

Kioi Sinfonietta Tokyo, Concert, (2nd July 2016), review 紀尾井シンフォニエッタ東京 豊田演奏会 評

2016年7月2日 土曜日
Saturday 2nd July 2016
豊田市コンサートホール (愛知県豊田市)
Toyota City Concert Hall (Toyota, Aich, Japan)

曲目:
Antonín Dvořák: Česká suita op.39 B.93
Wolfgang Amadeus Mozart: Concerto per corno e orchestra n.1 KV412 (movimenti 1 e 3)
(Movimento 2) Nino Rota: Andante sostenuto per il Concerto per Corno KV412 di Mozart (1959)
(休憩)
Ludwig van Beethoven: Sinfonia n.3 op.55

corno: Radek Baborák / ラデク=バボラーク
orchestra: Kioi Sinfonietta Tokyo(紀尾井シンフォニエッタ東京)
direttore: Radek Baborák / ラデク=バボラーク

紀尾井シンフォニエッタ東京(KST)は、ラデク=バボラークをソリスト・指揮者に迎えて、2016年7月2日に豊田市コンサートホールで、演奏会を開催した。本拠地である紀尾井ホールでは演奏されなかった。この演奏会が、「紀尾井シンフォニエッタ東京」の名での最後の演奏会となる。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴィオラ→ヴァイオリン-チェロのモダン対向配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、ホルンは後方上手側、ティンパニ・トランペットは後方下手側の位置につく。金管・打楽器は、本拠地の紀尾井ホールでの公演とは逆の位置である。

着席位置は一階正面やや前方上手側、観客の入りは8割程で空席が目立つ。観客の鑑賞態度は、若干ノイズがあったものの、概ね良好であった。

本日のメンバーは、レギュラーメンバーではない奏者が多かったようにも思える。コンサート-ミストレスは野口千代光さんである。

本拠地ではないということもあり、響きの検討が生煮え状態と感じたり、オーボエの響きに「若さ」が感じられる箇所が無きにしも非ずで、バボラークのホルンももっと豊かな表現が可能かなと思える箇所もあったが、全般的には曲が進むに連れて馴染んだ感がある。

私に取っての好みの箇所は、モーツァルトのバボラークとオーボエのやり取り(第二楽章であり、ロータによる作曲部分)と、第三楽章に於けるバボラークの弱音を披露するソロの箇所である。

Beethoven の3番は、冒頭部分は宇野功芳の真似かと一瞬思えたほどの遅さで焦ったが、以下はマトモな解釈ではある。全般的に遅めのテンポで堂々とした演奏である。いつもとは違うメンバーと思われるホルンにもう少し頑張って欲しかった箇所があると思うのは欲張りか?

アンコールは、前半のバボラークのソリスト-アンコールは、彼自身の作曲による「アルペン-ファンタジー」、演奏会終了時のアンコールは、ドヴォルジャークの「我が母の教えたまいし歌」であった。