2015年6月20日土曜日

Nagoya Philharmonic Orchestra, the 425th Subscription Concert, review 第425回 名古屋フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 評

2015年6月20日 土曜日
Saturday 20th June 2015
愛知県芸術劇場コンサートホール (愛知県名古屋市)
Aichi Prefectural Art Theater Concert Hall (Nagoya, Japan)

曲目:
Maurice Ravel: “Valses nobles et sentimentales” (高雅にして感傷的なワルツ)
Camille Saint-Saëns: Concerto per violino e orchestra n.3 op.61
(休憩)
Maurice Ravel: “Alborada del gracioso” (道化師の朝の歌)
Claude Debussy (arr. Michael Jarrell): Douze Études pour piano- 9. pour les notes répétées- 10. pour les sonorités opposées- 12. pour les accords (「12のピアノ練習曲」より、第9番「反復音のために」、第10番「対比的な響きのために」、第12番「和音のために」)
Maurice Ravel: “Boléro” (ボレロ)

violino: Miura Fumiaki (三浦文彰)
orchestra: Nagoya Philharmonic Orchestra(名古屋フィルハーモニー交響楽団)
direttore: Thierry Fischer(ティエリー=フィッシャー)

名古屋フィルハーモニー交響楽団は、2015年6月19日・20日に愛知県芸術劇場で、第425回定期演奏会を開催した。この評は、第二日目の公演に対してのものである。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴィオラ→ヴァイオリン-チェロのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パート・ティンパニ・ホルンは後方中央、ハープ・サキソフォン系や小太鼓・大太鼓等のパーカッションは後方下手側の位置につく。

私の着席位置は一階正面上手側後方、客の入りはほぼ満席である。ティエリー=フィッシャー人気なのか、ボレロ人気なのか?観客の鑑賞態度は、細かなノイズがあったものの、概ね極めて良好であった。

個人的にこの演奏会の白眉は、サン-サーンスのヴァイオリン協奏曲第三番である。ヴァイオリンのソリストである三浦文彰は、初めて聴くが、第一音から凄い!まるでヴィオラのような太く低い音色から始まる。

冒頭のみならず、三浦文彰のヴァイオリンは、惹きつけるべき箇所での一音が素晴らしいし、ホールを朗々とした響きで満たせる。愛知芸文の大きなコンサートホールをこれ程までの響きで満たせる奏者は、世界的にも少ない。第二楽章では緊張感を途切れさせない見事な演奏だ。第三楽章も同様に完成度が高い演奏であるが、ヴァイオリン-ソロから第一ヴァイオリンとのユニゾンに移行する場面は、変わり者の あきらにゃん のお気に入りの箇所である♪

管弦楽も、ヴァイオリン協奏曲モードに抑えることなく、ごく普通に交響曲を演奏するかのようなノリであるが、三浦文彰のヴァイオリンが良く響いているからこそ、そのようなノリで行けるのだろう。そのような状況下でバランスも良く取られ、これまた完成度が高い。

有名なメンデルスゾーンでもなくチャイコフスキーでもない、演奏機会が極めて少ないサン-サーンスの協奏曲で、これ程観客を惹きつける三浦文彰のヴァイオリンは、只者ではない。彼は庄司紗矢香の次の世代を担えるようになるだろう。

後半、「道化師の朝の歌」は中ほどのファゴットのソロが素晴らしい。ドビュッシーの12のピアノ練習曲も完成度が高い出来だ。「ボレロ」は二台目の小太鼓の攻め方や木管・サキソフォン系が特に良かった。サキソフォン系は、愛知芸文の響きを信じて、スッと音を引っ込める奏法を採ったようにも見受けられた。

ティエリー=フィッシャーは、全般的に管楽を際立たせるアプローチで、華麗な音色であった。