2015年5月17日日曜日

Mahler Chamber Orchestra, Leif Ove Andsnes, Tokyo performance (17th May 2015), review マーラー室内管弦楽団+レイフ=オヴェ=アンスネス 東京公演(2015年5月17日) 評

2015年5月17日 日曜日
Sunday 17th May 2015
東京オペラシティ タケミツメモリアル (東京)
Tokyo Opera City Concert Hall: Takemitsu Memorial (Tokyo, Japan)

曲目:
Ludwig van Beethoven: Concerto per pianoforte e orchestra n.1 op.15
(休憩)
Ludwig van Beethoven: Concerto per pianoforte e orchestra n.5 op.73

pianoforte: Leif Ove Andsnes (レイフ=オヴェ=アンスネス)
orchestra: Mahler Chamber Orchestra(マーラー室内管弦楽団)
direttore: Leif Ove Andsnes (レイフ=オヴェ=アンスネス)

マーラー室内管弦楽団は、2015年5月3日から17日までアジアツアーを行い、香港・台北・台南(中華民国)・上海・高陽(ソウル近郊)・静岡・東京にて計9公演の演奏会を開催する。全ての公演のピアノ独奏・指揮はレイフ=オヴェ=アンスネスである。

レイフ=オヴェ=アンスネスのピアノは、正面にピアノを舞台後方に向けて置かれ、蓋は取り外されている。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラ→第二ヴァイオリンの左右対向配置で、コントラバスはチェロの後方につく、木管パートは後方中央、ホルンは後方下手側、その他の金管・ティンパニは後方上手側位置につく。ティンパニは小さく鋭い音のするタイプである。

着席位置は一階正面中央やや上手側、客席の入りは九割程の入りで、一階後方上手側に空席が目立った。観客の鑑賞態度は、概ね良好であった。

前半はピアノ協奏曲第1番。第三楽章が面白い。また、木管が素晴らしい技量で盛り上げていた。

後半はピアノ協奏曲第5番。かなりピアノ優位の構成でテンポの変動を大きくつけている。管弦楽は控えめな表現であるが、弱音が綺麗である。変わり者のあきらにゃん のムフフポイントは、第三楽章で、下手側ホルン→上手側金管→その両方が合わさって絶妙なブレンドが得られた箇所と、その後で同じように精緻に弦楽が音を合わせてブレンドさせた箇所である。

アンコールは全てBeethovenの作品で、一般参賀の後に一曲加わり、計三曲となった。

一曲目は、ピアノ-ソナタ第18番第三楽章。二曲目は「12のドイツ舞曲」で、ここでも管弦楽の絶妙にブレンドされた弦楽の音色が聴けた。アンスネスはなんとタンバリンを叩いたが、素晴らしい出来だ。ここで客電もついて管弦楽が引き揚げたが、鳴り止まない拍手に応え、アンスネスのソロでバガテルを演奏し、演奏会を終了した。

15・17日の二回の演奏会によりBeethovenピアノ協奏曲全曲演奏会を構成したが、曲レベルで一番素晴らしかったのは第3番、楽章レベルでは第4番第二楽章であった。

チクルスものは、無謀な日程が組まれ、高い水準の演奏を構築出来ないまま演奏会に臨まざるを得ない事例もあるが、今回に関しては、そのような負の要素が避けられた。

今回のチクルスは、全般的に水準の高い演奏であったが、その成功の要因は以下の6つに集約されるだろう。

1. アンスネスのピアノ技量の確実さ
2. アンスネスの驚異的な体力
3. MCOの世界トップレベルの技量・自発性
4. 二回の演奏会で収まる内容であったこと
5. タケミツメモリアルの音響の素晴らしさ。特に第4番第二楽章では、この残響の美しさが効いた。
6. 既に何回も演奏されている内容であり、高水準の演奏が完成されており、アップデートでさらに水準を上げるのみの状態であったこと。

成功は始めから約束されていた。企画段階での吟味がいかに大切かを、改めて認識した、Beethovenピアノ協奏曲チクルスであった。