新国立劇場 中劇場(東京)
第一部
「機械は生きている」(1948年)
【振付・音楽】石井 漠
【演奏】加藤訓子(打楽器)
【出演】石井 登 ほか
「マスク」(1923年)
【振付】石井 漠
【音楽】アレクサンドル=スクリャービン
【出演】石井かほる
「恐怖の踊り」(1932年)
【振付】執行正俊
【音楽】マヌエル=デ-ファリャ『恋は魔術師』より
【出演】小林洋壱
「釣り人」(1939年)
【振付】檜 健次
【音楽】宇賀神味津男
【演奏】河内春香(ピアノ)
【出演】片岡通人
「スカラ座のまり使い」(1935年)(3つのバージョンでの上演)
【振付】江口隆哉
【音楽】フランツ=シューベルト『スケルツォ』D593
【演奏】河内春香(ピアノ)
【出演】1. 木原浩太 2. 西川箕乃助 3. 佐藤一哉・堀登
第二部
「体(たい)」(1961年)
【振付】石井みどり
【音楽】イーゴリ=ストラヴィンスキー『春の祭典』
【装置・衣裳】前田哲彦
【出演】酒井はな・佐々木大 他
ダンス-アーカイブ in Japan 2015は新国立劇場中劇場に於いて、2015年3月7日から8日にかけ2公演上演される。この評は、一回目3月7日の公演に対するものである。
第一部について、私の感覚はいつもの通りに変わっていると思うが、「釣り人」や「スカラ座のまり使い」の日本舞踊バージョンが興味深かった。「スカラ座」の方は、日本舞踊の時間的デフォルメ感覚が歌舞伎の影響を受けているのかなあと思わされる。殺陣の場面で、いい子ちゃんの主役が見得を切っている間に、どうして悪役はやっつけないの?とついつい感じてしまう時間感覚が似ているのだなあっと。常日頃、悪事ばかり企んでいるからかもしれないが♪
最初の演目である「機械は生きている」は、純ダンス的要素とは別に、その当時の日本のメカニカルな要素の強い工場が浮かび上がってくる。半導体工場やロボットばかりの自動車工場とは違う、なんて言うか、歯車とプレス機械に囲まれた1930年代の工場に連れて行かれた感覚だ。妙に同時代的感覚に支配されてくる。
第二部は「体」、「春の祭典」であるが、別の題名を付けているのは意味がある。
酒井はな さんは華やかな踊りで、新国立劇場バレエ団現役時代に見て置きたかったなあと・・。もちろん華やかさだけでなくて、言語化することを意図して見てはいないのでどのように表現するべきかわからないのだけれど、私にとっては完璧で、新国立劇場バレエ団時代に見ていたらファンになっちゃっていたかも♪「こうもり」のベラ役とか面白そうだなと思ったり♪♪
「体」はソリストの出演場面は少なく、群舞が中心になるが、前半部で女性群舞が一斉にシャープに決める場面は、私としては密かにテンションが上がるところ。そのテンションを保って終わったような感じか。舞台は、新国立劇場中劇場独特の構造を活かし、主舞台とその前方の前舞台(オケピットの場所に相当)を用い、長方形状に奥行きのある広さであるが、その空間を十分に活かし躍動感を感じさせる。
酒井はな さんがラストの場面で生贄にされる乙女の踊りをするのかと想定していたが、全く違うストーリー展開で、生贄が倒れるどころか、酒井はな さんが笑みを浮かべて、凱歌を上げるような終わり方は意外過ぎて、つい苦笑してしまったが、ここに「春の祭典」とはしなかった意味があるのだな。
Dance Archive in Japan 2015、財政面でいろいろと厳しいのだろうが、Archiveの中の作品をArchiveの中に閉じ込めて死蔵したままにしておくのではなく、生の実演の形で生きた形にするという点で、国立の劇場としての使命を果たしている。この事業は続けていって欲しいと願う。