2014年9月19日金曜日

ハインツ=ホリガー + 新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 演奏会評

2014年9月19日 金曜日
すみだトリフォニーホール(東京)

曲目:
ヨーゼフ=ハイドン(おそらく偽作) オーボエ協奏曲 Hob.Vllg:C1
ハインツ=ホリガー 「クリスティアン=モルゲンシュテルンの詩による6つの歌」
(休憩)
グスタフ=マーラー 交響曲第4番

オーボエ:ハインツ=ホリガー
ソプラノ:秦茂子

管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団(NJP)
指揮:ハインツ=ホリガー

すみだトリフォニーホールは、著名なオーボエ奏者であるハインツ=ホリガーと新日本フィルハーモニー交響楽団との共演する演奏会を主催した。チケットはNJPではなく、すみだトリフォニーホールから発行された。ホリガーは、オーボエ独奏、作曲、指揮の三役の姿を、この演奏会で披露する。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、ホルンは意外にも後方下手側、その他の金管は後方中央の位置につく。二曲目のホリガーの作品については、ハープが第一と第二ヴァイオリンの間に入った。

着席位置は一階正面ど真ん中よりわずかに下手側、客の入りは6割くらいである。三日前に購入したのにも関わらず、かなり良い席が入手可能であった。水戸とは違い、東京に於けるハインツ=ホリガーの人気はあまりないのか?観客の鑑賞態度は、基本的にかなり良好で、さすがはすみだトリフォニーの観客である。曲が終了し、ホリガーが明確に手を下ろすまで拍手をしない。無音にちゃんと耐えてくれる。これが当たり前なのだけど、なかなか実現しないのだ。

一曲目のハイドンは、演奏するのにトリフォニーは大き過ぎと思えるし、またホリガーのオーボエも音が多い所は怪しく感じられる所もあるが、第二・第三楽章はNJPもホリガーの意図を実現でき、素晴らしい出来となる。

二曲目・三曲目に出演したソプラノの秦茂子は、ある音よりも低音が出ない状態で、すみだトリフォニーホールに相応しい声量を持っているとはとても言えない。それでも、管弦楽の音量が絞られ、高音域を朗々と歌う場面は素晴らしい。具体的には、二曲目ホリガーの歌曲の3・4曲目、三曲目マーラー交響曲第4番終結部間近の部分である。

後半はマーラーの第四交響曲である。第一楽章は、NJPが全くホリガーの意図を実現しておらず、音符は鳴らしているが、ホルンは繊細さに欠け、フルート四人の見せ場も単調な音しか出せず、管弦楽全体もギクシャクしている状態であった。これはダメかもしれないと思わざるを得ない状況ではあったが、曲が進むにつれ改善される。第二楽章は、コンサートマスターに先鋭的な音色をもっと強調して欲しいところだが、すみだトリフォニーホールに於ける豊嶋さんはいつもあの程度の音量だ。ピンカス=ズッカーマン並みに響かせつつ、突き刺すような音で攻めて欲しいと願うところだが、私の好みに過ぎない望みであるのだろうか?

マーラーの4番で一番素晴らしかったのは、第三楽章だ。繊細な表現を実現させ、ホリガーの意図をほぼ100%実現している。一瞬止まるか止まらないかのテンポの再現も、的確に表現されている。あの第三楽章を聴くと、どうして第一楽章が雑なのか、理解に苦しむ。ホリガーの解釈は、全般的にテンポを揺るがしつつも、違和感を感じさせず、それだけ繊細な構築力を感じさせるものであるが、演奏できちんと実現して欲しいものだ。

要するに、三日間のリハーサル期間では短過ぎるのだろう。マーラー4番の場合、リハーサルでは第一楽章を捨てたのではないかと思われても、反論は困難だろう。ハーディングの時だって、最終楽章だけは素晴らしいが、やはりリハーサルに十分な時間を掛ける必要があるように思わざるを得ない。