2013年9月29日日曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 「メサイア」演奏会評

2013年9月29日 日曜日
長野県松本文化会館 (長野県松本市)(※)

曲目:
ゲオルク=フリードリヒ=ヘンデル オラトリオ「メサイア」 HMV56

ソプラノ:オクサーナ=ステパニュク
アルト:坂上賀奈子
テノール:大槻孝志
バス:太田直樹

合唱:公募の県民合唱団
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団(JPO)
 ゲスト-コンサートミストレス:物集女純子
 オルガン・チェンバロ:石野真穂
指揮:田中祐子

メサイア実行委員会は、JPOその他を管弦楽・ソリスト・指揮者として迎えて、2013年9月29日に長野県松本文化会館にて「メサイア」演奏会を行った。合唱団はアマチュアである。通常、長野県松本文化会館はボイコットしている私であるが、今回は友人知人の出演があり、他の予定が入っていない事を考慮し臨席することを決めた。

会場が、音響が優れている松本市音楽文化ホールではなく、この長野県松本文化会館となったのは、音楽面云々の問題ではなく、単に長野県文化振興事業団が関わった事業だからであろう。

管弦楽は、第一ヴァイオリン(8名)→第二ヴァイオリン(6名)→ヴィオラ(5名)→ヴァイオリン-チェロ(3名)→コントラバス(2名)と小ぶりな編成である。

着席位置は2階正面前方やや上手寄り、客の入りは5割程である。観客は1階に集中し、音響が比較的マシな2階は50名程度しかいない。観客の鑑賞態度はおおむね良好であったが、強風が吹き付けるピュー音が気になった。

前述したとおり、JPOの編成はかなり小さく、その上杉並公会堂に慣れたJPOがこのデッドな響きの長野県松本文化会館で十分な音量を出せるか疑わしかったが、予想外によい響きが出ている。合奏精度が十分に保たれ、強く弦を響かせているからなのか。

ソリストはテノールの大槻孝志の出来がダントツである。響きの強さ、安定性が抜群である。

ソプラノは二階を向いて歌うとなぜかよく響く状態である。但し、合唱をしている人たちの評価では、音取りに問題があったとのこと、最後のソプラノ-ソロのアリアが怪しかったようであるが、そのアリアで私が睡魔に襲われたのは、何か目に見えない作用があったのか。

アルトは、二階席に届くパワーが十分ではなかったが、曲が進むに連れ幾分改善された印象。バスは、パワー面ではともかく、ヴィブラートがあまり上手でなかった。

合唱はアマチュアであること、会場が長野県松本文化会館であることを踏まえれば、ここまでの出来まで仕上げただけ見事である。とにもかくにも特にソプラノの元気がよい。この長野県松本文化会館では、大きく響かせる事がまず重要で、精密さは二の次である。そのアプローチは見事に当たっていた。

(※:長野県松本文化会館は、2012年7月から、松本市に本社があるキッセイ薬品のネーミング-ライツにより「キッセイ文化ホール」と称されているが、呼称の変更に伴う混乱を避けるため、従前通り「長野県松本文化会館」の表記を用いる事とする。なお、長野県松本文化会館は長野県政府の施設であるが、長野県政府は県政府により設立された施設に「長野県立」の表記を用いない。)