2014年1月25日土曜日

庄司紗矢香+サンクト-ペテルブルク フィルハーモニー交響楽団 大阪公演 評

2014年1月25日 土曜日
ザ-シンフォニーホール (大阪府大阪市)

曲目:
ピョートル=イリイッチ=チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 op.35
(休憩)
ピョートル=イリイッチ=チャイコフスキー 交響曲第4番 op.36

ヴァイオリン:庄司紗矢香
管弦楽:サンクト-ペテルブルク フィルハーモニー交響楽団(Санкт-Петербургская Филармония им. Шостаковича)
指揮:ユーリ=テミルカーノフ

サンクト-ペテルブルク フィルハーモニー管弦楽団は、庄司紗矢香(ヴァイオリン)、エリソ=ヴィクサラーゼ(ピアノ)をソリストに、ユーリ=テミルカーノフに率いられて、2014年1月24日から2月1日までに掛けて日本ツアーを行い、東京・大阪・横浜・名古屋・福岡にて計7公演開催する。庄司紗矢香は1月25日に大阪、1月26日に横浜、1月30日に名古屋にてソリストとして登場する。庄司紗矢香がザ-シンフォニーホール、横浜みなとみらいホール、愛知県立芸術劇場と言った、音響に定評のあるホールのみに登場するのは深い意味がありそうだ。この評は、第二回目1月25日大阪市ザ-シンフォニーホールでの公演に対してのものである

庄司紗矢香は1983年生まれの、ヴァイオリニストであり、言うまでもなく日本人ではトップレベルのヴァイオリン奏者である。この1月30日に31歳の誕生日を迎える。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラ→第二ヴァイオリンの左右対向配置である。舞台後方には舞台下手側からコントラバス→木管楽器とその後ろにティンパニ→金管楽器の順である。ホルンのみ下手側に位置する事もなく、金管楽器は全て舞台上手側に位置する点が今日深い。ロシアの管弦楽団らしく、ティンパニのみが雛壇に乗っており、他は全て同一平面上での演奏である。

着席位置は正面後方下手側、観客の入りは九割五分程である。観客の鑑賞態度は良好であった。

第一曲のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲はとても優れた演奏である。ターコイズブルーのドレスを着た庄司紗矢香は、ソロの場面で見せるニュアンスが豊かで、特にテンポの独特かつ巧妙な揺るがせ方が抜群である。これは本当に名状しがたいもので、短い間に微妙に揺るがせ、彫りの深い表情を見せるのだ。

対する管弦楽も、前日のマーラー第2番「復活」の際には乱れていたらしいアンサンブルもキッチリ決まっている。

管弦楽のみの部分ではテンポが速めであるが、庄司紗矢香に引き継がれると、何の違和感なしにテンポがゆっくり目となって、彼女が構築する独自の世界に引き込まれるのが面白い。

庄司紗矢香と管弦楽とのバランスも良く考え抜かれている。これほどまでのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を生で接したのは初めてだ。

ソリスト-アンコールは、クライスラーの「レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース」op.6である。庄司紗矢香の構築する深い表現が味わえるアンコールである。

後半のチャイコフスキーの交響曲第4番は、アンサンブルはあっているし、個々の技量も完璧だし、綺麗に響いているし、で、テミルカーノフの意図通りの演奏である。随所に出てくる金管ソロをゆっくり吹かせたり、テンポを特に第二楽章で揺るがせたのが特徴か。大雑把だけどとにもかくにも爆演系でノックアウトさせるというものではなく、良くも悪くも「ロシア」的ではない。「ロシア」的でないという点では、あまり面白くない。

アンコールは、何故かエルガーの「愛のあいさつ」。て、ところがやはりロシアらしくないなあ。メインディッシュは庄司紗矢香と言うところか、彼女の30歳とは思えない彫りの深い表現を味わうことが出来た、演奏会であった。