2025年1月27日月曜日

Ballet de l’Opéra national du Capitole 'Magie Balanchine'

Ballet de l’Opéra national du Capitole
Magie Balanchine
Sunday, 29th December 2024
Orchestre national du Capitole, Direction musicale: Fayçal Karoui
Théâtre du Capitole, Toulouse, France

フランス国立キャピトル劇場バレエ団
「Magie Balanchine」
キャピトル劇場(フランス共和国トゥールーズ市)
フランス国立キャピトル管弦楽団、指揮:Fayçal Karoui
2024年12月29日(日曜日)

フランス南西部の都市トゥールーズにあるキャピトル劇場バレエ団は、2024年12月20日から31日に掛けて「Magie Balanchine」を8公演上演した。この公演は第7公演になる。
「Magie Balanchine」は三つのバランシン作品を上演するトリプルビルである。
「Theme and Variations」
「Tschaikovsky Pas de Deux」
「Who Cares?」

「Theme and Variations」は新国立劇場バレエ団で上演されてきた(Patricia Neary が振付指導者から引退し、今後上演できるかは不明だが?)。「Tschaikovsky Pas de Deux」は諸ガラ公演で頻繁に上演される。しかし、「Who Cares?」の日本での全編上演は、2003年K Ballet 、2004年 New York City Ballet のみである。日本にて20年以上に渡って全く上演されていない演目のToulouse での上演は貴重であり、大変意義深い。

振付指導者は、「Theme and Variations」、「Tschaikovsky Pas de Deux」は Ben Huys、「Who Cares?」は Diana White であった。日本にも来日している振付指導者である。

「Theme and Variations」の主演は Nina Queiroz, Ramiro Gómez Samón である。序盤 Nina は苦しい立ち上がりである。Ben Huys による「とにかくソフトにフェミニンに」踊るよう指導する方針も相乗して、音楽に遅れがちに始まり、固い。第8変奏では、Nina のサポートに必死で、Ninaと群舞6人(Théâtre du Capitol の舞台は狭く、群舞8人は厳しいと思われる)との間隔が揃わず、フォーメーションが乱れた。しかしながら、この後の Nina は奮闘し、第9変奏に於ける連発パドシャが鮮やかに決まり、その後の群舞との調和も良かった。デミソリストの階級と2021年入団の若手であることを踏まえれば「よく頑張った」と言える。次席ソリストと群舞は素晴らしく、主演に多少の難があってもカヴァーできる内容であった。
キャピトル劇場バレエ団は総勢35名の小規模カンパニーであり、プリンシパルとソリストを全部合わせても8人しかおらず、トリプルビルとなると、全ての演目にプリンシパルを投入するわけにはいかない。どれか一つの主演が将来期待できる若手デミソリストであることは止むを得ない。

「Tschaikovsky Pas de Deux」はNatalia de Froberville と Kleber Rebello の二人である。Natalia はさすがエトワール、甘やかに踊る箇所と切れ味鋭く踊る箇所との使い分けが決まり、強い印象を観客に与える。

休憩を挟んだ後半の 「Who Cares?」 が本日のメイン演目、プリンシパルやソリスト階級を惜しげなく投入している。George Gershwin の音楽に乗せ、ニューヨークの若者たちの青春群像劇の印象を与える演目である。ソリスト級4人と群舞10人によるダンサーの構成であるが、群舞にもデュオの見せ場が与えられている。よって、どのダンサーも優れていなければならない演目だ。

日本人/日系人と思わせる名前が3人あり、日本由来ダンサーが大活躍している。
デュオを与えられる見せ場では、 'S Wonderful で Hatuka Tonooka が、That Certain Feeling 2 で Minoru Kaneko が演じたが、様式だけでなく強い踊りで観客に圧を与えることに成功している。Minoru kaneko は男性群舞5人の筆頭格であり、真ん中で見事にリードしていた。

また、ソリストの Kayo Nakazato が最もテクニックを要し誤魔化しが効かない My One And Only のソロを任され、期待されたであろう堅実なテクニックで決めた。
当然のことながら日本由来以外のダンサーも素晴らしく、Marlen Fuerte Castro はプリンシパルらしく華のある演技で Fascinatin’ Rhythm のソロを始め、舞台を引っ張った。

最も特筆するべきは、全員が素晴らしいことである。「揃っている」云々の次元ではなく、一つの作品を作るに当たっての一体感や士気の高さが、この作品をフランスの地方劇場で花開かせた。この Toulouse の劇場で New York の街が現れ、華やかで懐かしさをも感じさせる青春群像劇が再現された。プリンシパル、ソリスト、群舞が一体となった舞台は強い。ファーストキャストで精鋭を集めた舞台であれば、地方の小規模バレエカンパニーでも高い水準の公演が可能であることを証明した。