2018年2月24日土曜日

Orchestra Ensemble Kanazawa, the 399th Subscription Concert, review 第399回 オーケストラ-アンサンブル-金沢 定期演奏会 評

2018年2月24日 土曜日
Saturday 24th February 2018
石川県立音楽堂 (石川県金沢市)
Ishikawa Ongakudo (Ishikawa Prefectural Concert Hall) (Kanazawa, Japan)

曲目:
Juan Crisostomo Arriaga: Sinfonia in re per grande orchestra
Wolfgang Amadeus Mozart: Andante per flauto e orchestra KV315
尾高尚忠 / Otaka Hisatada: Concerto per flauto e orchestra op.30a
Franz Peter Schubert: Sinfonia n.6 D589

flauto: 최나경/ Choi Jasmine
orchestra: Orchestra Ensemble Kanazawa (OEK)(オーケストラ-アンサンブル-金沢)
direttore: Matthias Bamert

オーケストラ-アンサンブル-金沢は、フルート-ソロに韓国人のチェ=ジャスミン、指揮にマティアス=バーメルト(当初予定の Jesús López Cobos は病気のため降板)を迎えて、2018年2月24日に石川県立音楽堂で、第399回定期演奏会を開催した。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→ヴィオラ→ヴァイオリン-チェロ→第二ヴァイオリンの左右対抗配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、金管パートは後方上手側の位置につく。

着席位置は一階正面わずかに後方上手側、客の入りは八割程であろうか。

演奏について述べる。

冒頭から序曲などではなく、交響曲である。19歳で夭逝したエウスカディ(バスク)の作曲家アリアーガのもの。滅多に聴けない曲だ。

今日のOEKは、キチッと音圧を掛け、ホールの響きを味方に付けている。序奏部の木管の伸びやかな響きから、この演奏会の成功を期待させる。指揮者バーメルトの構成力の巧みさが、感じ取れる。

二曲目と三曲目は、フルート-ソロにチェ=ジャスミンを迎えての演奏だ。音量が大きなタイプではなく、管弦楽も抑えめでサポートする。管弦楽から一歩抜け出して自己主張するタイプではなく、管弦楽に溶け込ませるタイプなのは、かつてOEKの客演奏者だったためなのか?

モーツァルトのカデンツァの部分、尾高尚忠の第二楽章は良かった。尾高尚忠の作はとてつもない難曲で、演奏にも難しさを感じさせる箇所もある。

圧巻だったのはアンコールで、イアン=クラークの「ザ-グレイト-トレイン-レース」、舞台を上手下手に歩きながら楽しげに、フルートからこんな音色が出せるのかと感嘆させる演奏である。

後半は、シューベルトの交響曲第6番だ。

Matthias Bamert が目指した路線は、テンポでヴィヴィッドにするのではないが(テンポはむしろ遅いだろう)、一音一音、精密に音色を深く考慮して産み出された、美しく明るい響きで、古典派の交響曲に求められるヴィヴィッド感を出すものである。この試みは成功する。

Matthias Bamert は曲を知り尽くし、かつオケの性格やホールの響きを、まるでホームのオケのように知悉した職人芸で、名演を導く。まさに、ベテランならではの至芸だ。

Matthias Bamert はこれ見よがしの作為をせず、精緻にオケの音色をコントロールする。金管の音をも柔らかくブレンドする一方で、出るべき所では木管に伸びやかに演奏させるなど、深い解釈ならではの説得力を与える。管弦楽も全力で応え、狙い通りの素晴らしい響きを出しまくる。

古典派の音楽はシンプルだからこそ、観客を満足させる演奏を実現させるのは難しい。しかし今日の Matthias Bamert 指揮による演奏は、指揮者・管弦楽・素晴らしい音響のホール、三位一体となって、音楽堂を幸せな響きで満たしていく。

大きなホール、大きな管弦楽の東京では味わえない、精緻に音圧を観客に与えていく、素晴らしい演奏であった。これだから、金沢通いはやめられない!

#oekjp

2018年2月10日土曜日

Kioi Hall Chamber Orchestra Tokyo, the 110th Subscription Concert, review 第110回 紀尾井ホール室内管弦楽団 定期演奏会 評

2018年2月10日 土曜日
Saturday 10th February 2018
紀尾井ホール (東京)
Kioi Hall (Tokyo, Japan)

曲目:
Franz Schubert: Pezzo da concerto per violino e orchestra D345
Johann Strauss Vater: ‘Die vier Temperamente’ op.59 (四つの気質)
(休憩)
Paul Hindemith: Thema mit vier Variationen ‘Die vier Temperamente’ für Klavier und Streichorchester (四つの気質)
Franz Schubert: Sinfonia n.5 D485

pianoforte: 小川典子 / Ogawa Noriko
orchestra: Kioi Hall Chamber Orchestra Tokyo(紀尾井ホール室内管弦楽団)
direttore: Rainer Honeck

紀尾井ホール室内管弦楽団(旧紀尾井シンフォニエッタ東京(KST))は、小川典子をソリスト、ライナー=ホーネックを指揮者に迎えて、2018年2月9日・10日に東京-紀尾井ホールで、第110回定期演奏会を開催した。この評は、第二日目の公演に対してのものである。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。ホルンは後方下手側、その他の管楽パートは後方中央、ティンパニは後方上手側の位置につく。

着席位置は一階正面後方僅かに上手側、。観客の鑑賞態度は、前半でノイズが入ったものの、フライングの拍手もなく、概ね良好であった。

一曲目のシューベルト小協奏曲D345は、ライナー=ホーネックの繊細なソロが目立った。

二曲目の、ヨハン=シュトラウス(父)の「四つの気質」は楽しい雰囲気だ。

三曲目も同じ「四つの気質」であるが、こちらはヒンデミット作のもので、ピアノ-ソロと弦楽(管楽は一切入らない)との協奏曲の性質が強い。

ピアノ-ソロが入るまでの弦楽から素晴らしく、低弦の響きをも楽しませる。ピアノも場面に応じ適切な響きで、弦楽とがっしり組み合う演奏であった。

休憩後はシューベルトの5番D485。丁寧な演奏であるが、欲を言えば、ヴィヴィッドな要素がもっと欲しいところであった。